水見色かおりのコンセプト

 巷にはファーストフードの店が多く登場し、それらにともなってペットボトルのお茶が定位置を確保しています。食生活の変化の中にあって日本茶も新しい味、薫りを模索することが必要な時代かと思います。刺激の強い味にも負けない存在感のあるお茶、人工香料の氾濫する食品群の中にあっても存在感の持てるお茶。そんな日本茶があってもいいのではないだろうか。むしろ多様な消費者ニーズに答える為には必要な事なのではないかと考えています。


<品 種>
 昨今ブームになっている中国茶の中に見られる「花香」をもつ品種を求めました。

  • 花香を作り出すための、萎凋(いちょう:茶の生葉の水分を意識的に減少させ「しおらせる」)という工程に耐えられること。
  • 萎凋によって作り出される「花香」が好ましいものであること。
  • 「新しいスタイルの日本茶」を作り出すといった観点から味の面でも適度な旨味を持ち、日本茶の範囲内にあって「おいしい」と感じられる事。
  • 消費者の求める「食の安全」へ期待にこたえる為にも、「病気」「害虫」に対して強い特性を持つ事。

以上が品種の条件でした。

 萎凋工程を取り入れるとすると日本製「中国茶」といったイメージを持たれるかもしれませんがそれとは全く異なります。中国茶と同じ製法で作り上げても、長い伝統と努力によって生み出されたそれとみまごうようなものは出来ないでしょう。あくまでも半歩進んだ「日本茶」にこだわりました。

<栽培>
 茶の樹、本来の姿である「自然仕立て」によって栽培を行います。ぼさっ木(竹ぼうきを逆さまにしたような形の木。)と呼ばれる、この栽培方法はハサミによる摘採(機械による摘み取り)が主流になるにつれて、その効率の悪さから最近では、ほとんど行われなくなりました。摘み取りは年に一度の「手摘み摘採」。1芽のために365日を費やした贅沢な栽培です。山々の木々が芽吹き山桜の咲きそろう4月初旬に収穫しました。1芯2葉に摘み取られた新芽はとても美しいものでした。

 肥料は自家配合によるオリジナルで、有機100%の「ぼかし肥(魚、蟹、菜種粕、米糠などを、山の微生物の力を借りて発酵させたものもの)」を使用しています。上手く出来た時の肥料のかおりは芳しいもので、様々な発酵食品を連想させ、出来上がったお茶の味や香りの隠し味として影響しているのではとも思うほどです。

 防除は天然物を主体にした保護材を主に使用しています。緊急避難的に年に1、2回農薬を使用する事もありますが、使用時期は6〜7月頃ですので摘採をする4月までには約8ヵ月の有余期間があります。農薬という農業資材を最大限に少量しか使用しないというのは、とても難しい事なのですが「元気な茶の樹は害虫や病気を寄せつけない。」という事を信念としています。

 収量や品質維持を「防除」だけにとらわれず『総合的に栽培体系を組み立てる』ことによって行い、環境負荷の低減をしつつ良い製品を作りあげていく事が大切であると思っています。

<製 法>

 現在の蒸し製緑茶の主流である「新鮮香(お茶の青々とした植物ような香り)」を重視するということから離れてみました。
摘み取ったお茶の葉の鮮度を出来る限り落とさずにお茶を作り上げて行く製法から、中国茶のなかでも「青茶」に見られるような「日光萎凋(太陽の光によって萎凋を進める工程)」、「室内萎凋(屋内において萎凋を進める工程)」を行いました。
 包種茶や烏龍茶、紅茶など製法の中に「萎凋・発酵(酸化)」の工程を取り入れたお茶が高い香りを持つのであればその製法をバランスよく組み込み、すなわち「微発酵の花香るお茶」を目指しました。

<販 売>

 製品が出来てもそれをどうやって販売してゆくのかが大きな課題です。大きな特長を持つということはその評価もはっきりと分かれるということが考えられます。よい製品の製造は出来てもひとりの力で多くの人達に紹介しいくというのは難しい問題です。
 数々の特長ある品種が作り出されて来ても普及しきれ無かった原因の多くはここにあるのでは無いでしょうか。
今回の水見色かおりは「生産者・製茶問屋・専門店・消費者」の流通に関わる全ての人達とともに開発をしてきました。販売面の協力はもとより、製造の段階から製品としての水見色かおりの特長を活かした「お茶の入れ方・愉しみ方」まで意見を交わしました。

<最後に>

 水見色かおりというお茶を世に出すにあたり、ある意味、茶の業界の風通しの悪い部分を取り払い、生産者から消費者までが望む「美味しいお茶つくり」が出来たと考えています。

 そして、これこそがまさに「フロンティア」なのではないかと思います。多くの方達にお茶を通じて幸せをお届け出来れば幸いです。

水見色かおり生産者 山森 美好

<戻る>

スタッフのページへ